それからまた少し日が進み、霜月は終わって、師走を迎えた。
年の瀬の師走、十二月。
あとひと月で正月を迎えるという慌ただしさは、どの世界でも変わらない。

白く煙る息に肩をすくめ、自分の体を抱えながら、花菜は眩しそうに空を見上げた。

ここ数日、小雨が降ったり曇ったりとはっきりしない天気が続いていたが、今朝はどこまでも青い空が広がっている。

「今日は暖かくなりそうですね」

「そうね。よかったわ」

日差しはポカポカと温かい。晴れの日はやりたいことが沢山ある。

花菜と小鞠は勇んで庭に下りた。

一等地の南の庭は、普通の貴族の邸ならば白砂が敷き詰められているとか、季節を彩る樹木や草花が植えてあったりするだろう。

でも、ここ藤盛邸の場合はちょっと違う。

池の端には三つ葉が植えてあり、その脇は白砂ではなく畑になっていた。

「おはよう嗣爺」

既にその畑では、嗣爺が葉物野菜の収穫に勤しんでいる。