着替えが終わって台所がある下屋に戻ると、煮干しの出汁の香りが漂っている。

「ああ、いい香りね」

「はい。お腹が空いてくる匂いです」

「うふふ、ほんと。私もお腹と背中がくっつきそうよ」

鍋の中に収穫したてのキノコや芋、それに野菜を入れてコトコトと煮た。

仕上げに味噌を入れる。

「さあ、出来上がったわ」

「うわー、美味しそうです!」

この世界では、味を付けた料理は少ない。
茹でたり焼いたりしただけの素材に、各々が味噌や塩などを付けて食べるだけなのである。
汁物は塩味と決まっていた。

なので、花菜が作るような出汁の利いた味噌味のキノコ汁は、とても珍しいものだった。

「いい匂いですな」

香りに誘われたように、嗣爺がひょっこりと顔を出す。

「早速キノコを使ったわ。キノコ汁よ」