その日の夜。

「ね? いい感じでしょう?」

こっちこっちと、李悠の袖を引いて花菜が連れてきたところからは、時光と小鞠が背を向け合いながら話をしている様子が見える。

顔は見えないが、二人を纏う空気はそこだけが甘く匂い立つようだ。

両手を握り締め、花菜はうれしそうに覗き込んでいる。
李悠はクスッと笑った。

「へぇ、そうだったのか」

「お似合いだと思わない?」

満足そうににんまりと笑う花菜の頬を、李悠はそっと包み込む。

「うまくいくといいな」

「私、小鞠には私と同じくらい幸せになってほしいの」

うんうんと頷きながら、李悠は花菜を抱きしめた。

「花菜は幸せか?」

「もちろんよ! 怖いくらい幸せなの」

――泣きたいくらい幸せなのよ。


今から千年以上前のこと、
平安京は恋の季節を迎えている。