「十日おきに行き来しようと思うのよ」

ふむふむと小鞠は頷く。

「でね、明日から十日は向こうに行くことになったの。小鞠も一緒に行き来しましょう?」
「え!よろしいのでございますか?」

「お母さまにも了解してもらったの」

ヒシと手を取り合い、ふたりは喜び合った。

「だって小鞠が一緒じゃないと寂しいもの」
「私もです、姫さま」

ホー、ホケキョ。
ふと、耳に届く美しい響き。

「うぐいすだわ」
鳴き声に釣られるように庭を振り返り、空を見上げながら小鞠が言った。

「姫さま、この様子では今夜の雨の心配はありませんね」

西の空では薄い雲が色付き始めている。
でも、雨を降らすような雲はない。

「よかった」

今夜も彼が来る。

――雨に濡れては可哀想だから。

でも。
明日の明け方なら、降ってもかまわない。
雨が彼の足を止めてくれるなら……。