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「姫さま、殿さまも北の方さまもとても喜んでいらっしゃいますよ」

小鞠が興奮ぎみに瞳を輝かせた。

結婚後の花菜の住まいは李悠の邸ということになっていたが、花菜の希望で好きなように実家と行ったり来たりしていいということになった。

夫となった李悠が言ってくれたのだ。
『花菜がいる方の邸に帰るから、好きにしてかまわない』

何しろ彼はひたすらに優しい。
甘く抱き寄せられた昨夜を思い出し、つい頬が紅くなる。

エヘンと咳払いをして、花菜は胸を張った。

「ほら、私ひとりっ子だから、この家から出て行ったらお父さまもお母さまも寂しいでしょう? お願いしてよかったわ」

そう言って満足げににんまりと笑う。
お嫁に行っても寂しい思いはしたくない。実はもう二度とホームシックにはなりたいくないという自分の都合もあった。