結局はすれ違いと誤解だった。

彼は藤盛家を訪ねた時に姿を見せたので、花菜が気づくはずだと思っていたし、気づかなくても手紙を読めばわかるだろうと思っていた。
花菜は彼がカイに似ているとは思ったけれど、今回ばかりは他人の空似だと思ったし、手紙の二枚目に気づいてはいなかった。

「姫さま、よかったですね」
花菜はにっこりと笑顔で頷く。

小鞠だけにはカイが彼だったと伝えてある。
そのことはカイ本人も了承済みだ。

だから、小鞠のよかったですねには沢山の意味がある。

李悠さまがカイでよかった。
彼が迎えに来てくれてよかった。
そのままの花菜を受け入れてくれる人でよかった。
そしてなにより好きな人の妻になれて、本当によかった。

「小鞠のおかげよ、スミレさんのところに行かせてくれたから、ありがとう小鞠」

「あ、そうそう姫さま。明日は緑子さまと朱鳥さまがお泊りにいらっしゃるそうですよ」

「え! 本当に? うれしい!」