藤原蒼絃は庭先から現れた。
そのまま濡れ縁に腰を下し、桜を見つめてから花菜を振り返った。
「元気そうでよかった」
「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや、この前は驚かせてしまって、すまなかったね」
竹林の別荘での、月君とのやりとりを彼は全て知っている。
それが他の人ならば恥ずかしかったかもしれないが、不思議とそんな気持ちにはならない。
花菜の家出事件も、彼のお陰で大事にならずに済んだのである。
ただただ感謝の念しか浮かばなかった。
「とんでもないです。私のほうこそ、御迷惑をかけてばかりで」
「それでもう、話をすすめて良いのだね?」
「はい。ご心配ありがとうございます」
頬を染めて礼を言いながらふと、月君のことが脳裏に浮かんだ。
――私が結婚を受け入れたと知ったら彼はどう思うのだろう?
何しろあの時、李悠でも月君でもなく他に好きな人がいるのだと宣言したのである。
このままでは、私は好きでもない人と嫌々結婚するのだと思われてしまう。
李悠さまを悪者にはできない。
それについては誤解を解いておかなければ。月君にも、あの場にいた蒼絃さまにも。
「私の勘違いだったんです。あの、私が想っていた人は、実は、李悠さまで」
焦るようにそう言ったものの、これ以上はどう告げるべきかと迷った。
――人鬼丸が李悠さまとは知らなかったので、なんて言えないし。
もじもじしながら悩んでいる花菜を尻目に、
「いつだったか、花菜姫が熊に襲われそうになった時のことか」
と、蒼絃が言った。
そのまま濡れ縁に腰を下し、桜を見つめてから花菜を振り返った。
「元気そうでよかった」
「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや、この前は驚かせてしまって、すまなかったね」
竹林の別荘での、月君とのやりとりを彼は全て知っている。
それが他の人ならば恥ずかしかったかもしれないが、不思議とそんな気持ちにはならない。
花菜の家出事件も、彼のお陰で大事にならずに済んだのである。
ただただ感謝の念しか浮かばなかった。
「とんでもないです。私のほうこそ、御迷惑をかけてばかりで」
「それでもう、話をすすめて良いのだね?」
「はい。ご心配ありがとうございます」
頬を染めて礼を言いながらふと、月君のことが脳裏に浮かんだ。
――私が結婚を受け入れたと知ったら彼はどう思うのだろう?
何しろあの時、李悠でも月君でもなく他に好きな人がいるのだと宣言したのである。
このままでは、私は好きでもない人と嫌々結婚するのだと思われてしまう。
李悠さまを悪者にはできない。
それについては誤解を解いておかなければ。月君にも、あの場にいた蒼絃さまにも。
「私の勘違いだったんです。あの、私が想っていた人は、実は、李悠さまで」
焦るようにそう言ったものの、これ以上はどう告げるべきかと迷った。
――人鬼丸が李悠さまとは知らなかったので、なんて言えないし。
もじもじしながら悩んでいる花菜を尻目に、
「いつだったか、花菜姫が熊に襲われそうになった時のことか」
と、蒼絃が言った。



