貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「時々、東市で見かけていた。気づいていなかっただろう?」

「そうなのですか?」

「花菜の作ったあの屯食を、買って食べたこともある」

「ほんとうに?」

「ああ。あの時もらった屯食と同じ味がしたよ」

熊が現れて、カイが助けてくれて。
あの日が全てを変えたのだろうか?

彼は俯く花菜の顎に指をかけた。
そして頬を両手で包み込む。

「私の妻になれ、花菜」

花菜は李悠の美しい瞳を見つめ、小さく頷いた。

「貴族はいやでも、盗賊が好きとは、仕方がない姫だ」

「え? それをあなたが言うのですか?」

アハハと笑いあう。

笑ううち、李悠とカイが少しずつ花菜の中でひとつになっていく。

「でも私、貧乏なのに、本当にいいのですか?」

彼はにっこりと笑う。

「お前じゃなきゃ、恋はしなかったよ」
 
盗賊と貧乏姫。

笑っちゃうような組み合わせ、まるで物語みたいね。
そんなことを思いながら微笑む花菜の頬を、一滴の涙が伝った。