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「本当に短い間でしたけど、お世話になりました。みなさんのことは忘れません」
「またいつでもおいで」
「元気でね」
次の日の朝、花菜はトキに付き添われてスミレの家を出た。
藤盛家に帰るその前に向かったのは、五条通りにあるトキの邸。
そこで待ち合わせた人がいる。
「人鬼丸が捕まったのは、両手で数えきれないくらいよくあることなんですよ」
「そうなの?」
「たまに捕まっても、我こそ本物であると名乗る賊がいるようです。なんなのでしょうね」
「昨日捕まったあの人も人鬼丸だって名乗ったの?」
「ええ、そのようですね。検非違使が話をしているのを聞いたところでは、留守中の邸に忍び込んだはいいが、物色中に家の者が帰ってきてあっさり捕まったらしいです。その時に『我は人鬼丸ぞ』と脅してみせたとかなんとか。実害はないので東国か大宰府あたりに流されるだけで済むかもしれませんが、なんとも情けない話です」
なにも知らず、あんなに取り乱した自分が恥ずかしくなった。
「本当に短い間でしたけど、お世話になりました。みなさんのことは忘れません」
「またいつでもおいで」
「元気でね」
次の日の朝、花菜はトキに付き添われてスミレの家を出た。
藤盛家に帰るその前に向かったのは、五条通りにあるトキの邸。
そこで待ち合わせた人がいる。
「人鬼丸が捕まったのは、両手で数えきれないくらいよくあることなんですよ」
「そうなの?」
「たまに捕まっても、我こそ本物であると名乗る賊がいるようです。なんなのでしょうね」
「昨日捕まったあの人も人鬼丸だって名乗ったの?」
「ええ、そのようですね。検非違使が話をしているのを聞いたところでは、留守中の邸に忍び込んだはいいが、物色中に家の者が帰ってきてあっさり捕まったらしいです。その時に『我は人鬼丸ぞ』と脅してみせたとかなんとか。実害はないので東国か大宰府あたりに流されるだけで済むかもしれませんが、なんとも情けない話です」
なにも知らず、あんなに取り乱した自分が恥ずかしくなった。



