貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

琵琶の音だけでなく姿も声も美しいと評判で、都で楽瑛がお説教をする法会があるとなると、こぞって人々が押し寄せた。

このままもう少し、その美しい音に耳を傾けていたかったが、そうゆっくりもしていられない。

邸に帰ったら、明るいうちにすることが沢山ある。
採ってきたキノコや木の実を選別もしなければならない。

後ろ髪を引かれる思いで、ふたりは家路を急いだ。


さて、その山寺では――。

清く澄んだ池に迫り出している釣り殿で、ひとりの僧が琵琶を奏でていた。

ふたりが噂をした通り、その僧の名前は楽暎。

この世の憂いを音にかえるかのように、彼は目を閉じて絃を弾いている。