貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

とその時、通りからドドドと人々が走る音が聞こえてきた。

「たいへんだー!」という大声のあとに聞こえたのは――。

「人鬼丸が捕まったぞ!」
「大変だっ! 人鬼丸は貴族だったぞー!」

――えっ?!

「あ、花菜姫っ」
花菜は無意識のうちに通りへ飛び出した。

「だめよ、そんなのだめよ」

「姫! お待ちください! 姫!」

慌ててトキは追いかけるが、花菜は人混みの中に紛れてゆく。

――カイ!

手紙を握り締めたまま、花菜は飛ぶように必死で走った。
走るうちに夜の帳はみるみる下りてゆく。

やがて人だかりが見えた。