貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

『私はどうしても歌を詠むのが苦手なのだ』

二枚目を読みながら茫然と立ち尽くす花菜をみて、トキは何度目かの溜息をつく。

「墨が渇ききっていなかったのか、一枚目にくっついていたのですね」

一枚目の紙を裏返して見れば、一か所墨が付いている。

――やれやれ。
李悠さまも、こんな紛らわしい書き方をせずに最初から素直に書けばいいものを。

花菜姫も、持ち歩くほど大切にしているくせにどうして二枚目に気づかないんだ?

どちらにも呆れるほかなかったが、それが恋なのかと、ふと思った。

見れば、花菜はじっと文を見つめていた。

花菜が呆れた手紙には、実は続きがあった。

その紙は、不幸にも一枚目の紙が全てだと思い込んだ花菜の目に触れてはいなかったのである。