――なにをいいだすかと思ったら。
もういっそ、自分は実は男ですし、李悠さまにお仕えしているのですよと言ってやろうかと思ったが、なんとか堪えた。
「ち・が・い・ま・す」
「え――、でもなんか、あやしいー」
「あのですね。実は、私の兄の友人が、李悠さまの舎人をしているのです。だから聞いているのですよ」
「え? そうなの! ほんとうに?」
「本当です。言ってましたよ、李悠さまは『私の想い人はとても健気でかわいいんだ。家族のためにがんばっているんだ』って」
「それって、もしかして、私のこと?」
「あなた以外にどなたがいるんですか」
「嘘よ。そんなことを言ったって騙されないんだから」
頬を膨らませる花菜にやれやれとため息をつきながら、トキは、「本当のことですよ」と、重ねて言った。
「歌を贈ったと聞きましたが、もしかして、その歌が気に入らなかったのですか?」
「あれを気に入る人がこの世にいるとは思えないわ」
「そんなに酷いのですか?」
頷いた花菜は口を尖らせてモソモソと着物の中から紙を取り出した。
「これよ」
もういっそ、自分は実は男ですし、李悠さまにお仕えしているのですよと言ってやろうかと思ったが、なんとか堪えた。
「ち・が・い・ま・す」
「え――、でもなんか、あやしいー」
「あのですね。実は、私の兄の友人が、李悠さまの舎人をしているのです。だから聞いているのですよ」
「え? そうなの! ほんとうに?」
「本当です。言ってましたよ、李悠さまは『私の想い人はとても健気でかわいいんだ。家族のためにがんばっているんだ』って」
「それって、もしかして、私のこと?」
「あなた以外にどなたがいるんですか」
「嘘よ。そんなことを言ったって騙されないんだから」
頬を膨らませる花菜にやれやれとため息をつきながら、トキは、「本当のことですよ」と、重ねて言った。
「歌を贈ったと聞きましたが、もしかして、その歌が気に入らなかったのですか?」
「あれを気に入る人がこの世にいるとは思えないわ」
「そんなに酷いのですか?」
頷いた花菜は口を尖らせてモソモソと着物の中から紙を取り出した。
「これよ」



