貧乏姫でもいいですか？（+おまけ）

やはり浅はかな考えなのか。

すっかりしょげかえって黙りこむ花菜を見て、トキは溜め息をつく。

「そんなにイヤなのですか？　李悠さまが」

「……べつに、そういうわけじゃぁ」

「生活の保障、一族の繁栄、そしてなによりも李悠さまの溢れるばかりの愛情。全てが手に入るというのに、どこが不満なのですか？」

言っているうちに、トキは怒りが止まらなくなってきた。

――ふざけるな！

「李悠さまの純粋なお気持ちを踏みにじってまで出家をしたいのなら、どうぞ、ご勝手に」

「トキさん……」
花菜の目にもトキの怒りは伝わった。

あきらかにその声は怒気を含んでいるし、花菜を見下ろす目は冷ややかである。

トキはプイッと背中を向けて、薪の片付けの続きをはじめた。

叱られた子供のように花菜はますますシュンとして小さくなったが、次第に沸々と疑問が湧きあがった。

――李悠さまの純粋なお気持ち？

「もしかして、トキさん」

まるで本人を知っているかのようなその口ぶり。
あきらかに肩入れしているその発言。

そんなことまで言うなんてちょっと変ではないか？

「李悠さまのことが好きなの？」

「は？」
振り返ると、花菜はうかがうようにジーッと見上げている。

あきらかに疑いの眼差しだ。