貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「どうして?」

トキは、なんとしてもそんな考えを止めさせなければならない。
「そんなことをしたら、悲惨な未来しかありませんよ」
嘘だろうが本当だろうが関係ない、思いつく限りことを言って花菜を脅した。

「出家を止められなかったご両親は責めをうけ、藤盛家は没落するしかないですよ。それに後ろ盾もなく尼になどなったらどうなると思います? 生臭坊主の慰み者にされてもいいのですか?」

「な、慰みもの?! 嘘でしょ? ただの噂でしょう? それに尼になってもお寺に籠もらずに変わらず家にいれば、そんな目に合わないで済むわよね?」

「甘い、甘すぎます。家にずっといて、一切修行をしないことなど、あると思います?」

「……それはそうでしょうけど、でもそんな酷い目に合うとは限らないでしょう?」

「なってみればわかりますよ……飽きられたら適当なところで捨てられるのです。先日も六条河原あたりに無残な尼の亡骸があったそうで」

ヒィっと花菜は身をすくめた。

「物乞いの尼も時々見かけるじゃないですか。あんなふうになりたいのですか? 若いうちはいいでしょうけれど、後ろ盾がないとはそういうことですよ」

――後ろ盾。

確かにそんなものはない。