頭中将に胸躍らせたことが初恋だと思っていた。
でもあの気持ちは恋というよりは憧れに過ぎなかったのかもしれない。頭中将が朱鳥を好きだとわかっても、それほど傷ついたりはしなかった。
だけど、この想いは違う。
「素敵なひと?」
「ええ。きのこ狩りに山に行った時に出会ったの。熊が出てね。その人が助けてくれた」
言いながら花菜は思った。
あの時、恋に落ちたのかもしれないと。
「それだけよ。その人は名乗らずに行ってしまったし、ただそれだけの一瞬の恋」
「そうですか」
トキはそれ以上、質問はしなかった。
「素敵な出会いですね。まるで物語だ」
「ふふ。ほんと、まるで物語」
月君が一歩前に踏み出したあの時に、またひとつ気づいてしまった。
自分が飛び込みたい胸は……、
この胸じゃないと。
でもあの気持ちは恋というよりは憧れに過ぎなかったのかもしれない。頭中将が朱鳥を好きだとわかっても、それほど傷ついたりはしなかった。
だけど、この想いは違う。
「素敵なひと?」
「ええ。きのこ狩りに山に行った時に出会ったの。熊が出てね。その人が助けてくれた」
言いながら花菜は思った。
あの時、恋に落ちたのかもしれないと。
「それだけよ。その人は名乗らずに行ってしまったし、ただそれだけの一瞬の恋」
「そうですか」
トキはそれ以上、質問はしなかった。
「素敵な出会いですね。まるで物語だ」
「ふふ。ほんと、まるで物語」
月君が一歩前に踏み出したあの時に、またひとつ気づいてしまった。
自分が飛び込みたい胸は……、
この胸じゃないと。



