貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「さあ急ぎましょう」
どこからともなく現れたトキに手を引かれて門へと走ると、緑子と朱鳥が追いかけてきた。

「花菜、あっちよ。馬が用意してあるわ」

朱鳥が指差すほうには馬がいる。

「自分で帰って来る馬だから、乗り捨てて大丈夫よ」

「ありがとう朱鳥。緑子もありがとう、またね」

門の外に立って手を振るふたりが、すぐに小さくなった。

振り落とされないようにトキの背中に捕まり、失踪する馬の背の上で花菜はなぜだか涙が溢れてきた。

『恋しくてしかたがないんだ』

カイとの出会いがなければ、もしかしたら、その気持ちに答えることができたかもしれない。
でも自分には答えることができない。

――ごめんなさい月君。

それでも、彼の気持ちを想い、涙が零れた。

恋をしているからこそ、わかる痛みがある。

その痛みの原因が自分であることが申し訳なく、気持ちに答えられないことがまた申し訳なく、
全てが嫌になるほど心は彷徨い、途方に暮れるのだった。