ドドドと、走ってくるような大きな足音を立てながら、御簾の向こうに現れたのは。
「え?」
朱鳥も緑子も、驚きのあまり思わず仰け反った。
「つ、月君?」
「朱鳥姫、お久しぶりです。来て早々申し訳ありませんがこちらに花菜姫は来ていませんか?」
勢いに押されたまま茫然と朱鳥は答えた。
「く、来るには来ましたが、もう帰りました」
「いつ? 何で来られた? 牛車? 馬? 徒歩? とても大切なことなのです。いつここを出られたのですか?」
畳みかけるように言いながら、碧月はじりじりと詰め寄ってくる。
恐怖を感じるほどの迫力だ。
「え、え、っと、す、少し前ですが」
上から下がっている御簾が早くも突破されそうな勢いに、朱鳥はしどろもどろになり、緑子は逃げ腰になって床に手をついた。
「人にはすれ違いませんでした。一本道ですよ?」
「す、少しとは言っても、あの、一刻くらい前だったかも?」
「失礼!」という声と共に、碧月は御簾を捲りあげた。
「キャア」
突然のことに朱鳥も緑子も顔を隠せなかった。
慌てて扇を手にした時には、既に碧月はその奥の障子を開けていた。
ひっくり返るように体を横にして仰天している花菜と目が合う。
「つ、月君」
「花菜」
素早く後ろに下がり、下女らしく顔を床につけているトキは、
歯ぎしりをする思いでひれ伏した。
「え?」
朱鳥も緑子も、驚きのあまり思わず仰け反った。
「つ、月君?」
「朱鳥姫、お久しぶりです。来て早々申し訳ありませんがこちらに花菜姫は来ていませんか?」
勢いに押されたまま茫然と朱鳥は答えた。
「く、来るには来ましたが、もう帰りました」
「いつ? 何で来られた? 牛車? 馬? 徒歩? とても大切なことなのです。いつここを出られたのですか?」
畳みかけるように言いながら、碧月はじりじりと詰め寄ってくる。
恐怖を感じるほどの迫力だ。
「え、え、っと、す、少し前ですが」
上から下がっている御簾が早くも突破されそうな勢いに、朱鳥はしどろもどろになり、緑子は逃げ腰になって床に手をついた。
「人にはすれ違いませんでした。一本道ですよ?」
「す、少しとは言っても、あの、一刻くらい前だったかも?」
「失礼!」という声と共に、碧月は御簾を捲りあげた。
「キャア」
突然のことに朱鳥も緑子も顔を隠せなかった。
慌てて扇を手にした時には、既に碧月はその奥の障子を開けていた。
ひっくり返るように体を横にして仰天している花菜と目が合う。
「つ、月君」
「花菜」
素早く後ろに下がり、下女らしく顔を床につけているトキは、
歯ぎしりをする思いでひれ伏した。



