***
キャッキャと賑やかな笑い声が耳に届く。
――これだから女は。
チッと舌を打ち、トキは溜息をつく。
太陽がつくる影の角度を見て時間を気にしながら、トキは焦っていた。
日の出と共にこの別荘を出るつもりでいたのだが、いま少し、いま少しと引き留められてもうすぐ昼になる。
ここは陰陽師の別邸だ。
邸内にいる限り花菜姫が安全であることは保障されているようなものだが、それでも拭いきれない不安が残る。この世に絶対というものはない。
ついに痺れを切らし、御簾越しに声をかけた。
「花菜姫さま、午の刻でございます。そろそろ行きませぬと」
「え? あらもうそんな時間? 大変、行かなきゃ」
とその時だった。
ヒヒーンという馬の嘶きが聞こえた。
――まずい。
「花菜姫、人が来たようです。朱鳥さま、誠に失礼ながらくれぐれも花菜姫のことは内密に」
「ごめんね、朱鳥。蒼絃さまには後でよろしく伝えてくれる?」
「わかったわ、大丈夫よ任せて。ちょうど帰ったことにすればいいのよね?」
「ええ、ごめんなさい。緑子もよろしく」
朱鳥と緑子はしっかりと頷いた。
「とりあえず、その障子の向こう側にいて」
キャッキャと賑やかな笑い声が耳に届く。
――これだから女は。
チッと舌を打ち、トキは溜息をつく。
太陽がつくる影の角度を見て時間を気にしながら、トキは焦っていた。
日の出と共にこの別荘を出るつもりでいたのだが、いま少し、いま少しと引き留められてもうすぐ昼になる。
ここは陰陽師の別邸だ。
邸内にいる限り花菜姫が安全であることは保障されているようなものだが、それでも拭いきれない不安が残る。この世に絶対というものはない。
ついに痺れを切らし、御簾越しに声をかけた。
「花菜姫さま、午の刻でございます。そろそろ行きませぬと」
「え? あらもうそんな時間? 大変、行かなきゃ」
とその時だった。
ヒヒーンという馬の嘶きが聞こえた。
――まずい。
「花菜姫、人が来たようです。朱鳥さま、誠に失礼ながらくれぐれも花菜姫のことは内密に」
「ごめんね、朱鳥。蒼絃さまには後でよろしく伝えてくれる?」
「わかったわ、大丈夫よ任せて。ちょうど帰ったことにすればいいのよね?」
「ええ、ごめんなさい。緑子もよろしく」
朱鳥と緑子はしっかりと頷いた。
「とりあえず、その障子の向こう側にいて」



