碧月は沈黙したままだ。
李悠や東宮を産んだ妃はいずれも帝よりも年上の方々で既に亡き人である。
現在帝の寵愛を一身に受けている弘徽殿の女御だが、中宮の座は空いたままになっている。
蒼絃が言っていることには議論の余地がない。
それが事実だ。
強い者にならなければ大切なものを守ることができない。それがこの世の定説である。
――ただ。
「それでも会いたい」と碧月は言った。
「会ってどうする? 仮にも相手は李悠だ。事と次第によってお前は遠国に流罪、女御は出家ということになるやもしれぬ」
「先のことに押しつぶされて今を生きられるかっ! とにかくいま会いたいんだ!」
碧月の声に驚いたように、椿の花がポロリと池に落ちた。
広がる水の輪が消えてゆくさまを、しばらく見つめていた蒼絃は「わかった」と言って立ち上がった。
「もしかすると居るかもしれぬ」
「花菜が?」
蒼絃は頷く。
「行ってみるか?」
「行く」
李悠や東宮を産んだ妃はいずれも帝よりも年上の方々で既に亡き人である。
現在帝の寵愛を一身に受けている弘徽殿の女御だが、中宮の座は空いたままになっている。
蒼絃が言っていることには議論の余地がない。
それが事実だ。
強い者にならなければ大切なものを守ることができない。それがこの世の定説である。
――ただ。
「それでも会いたい」と碧月は言った。
「会ってどうする? 仮にも相手は李悠だ。事と次第によってお前は遠国に流罪、女御は出家ということになるやもしれぬ」
「先のことに押しつぶされて今を生きられるかっ! とにかくいま会いたいんだ!」
碧月の声に驚いたように、椿の花がポロリと池に落ちた。
広がる水の輪が消えてゆくさまを、しばらく見つめていた蒼絃は「わかった」と言って立ち上がった。
「もしかすると居るかもしれぬ」
「花菜が?」
蒼絃は頷く。
「行ってみるか?」
「行く」



