貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

盗賊とはいえ、人鬼丸が襲うのは強欲で評判の悪い貴族の蔵ばかりだという。そして奪った物は、貧しい人々に分け与える。

人鬼丸は、平安京の正義の味方。ヒーローだ。

まるでスターに出会ったように、花菜は胸を躍らせた。

「顔が見えなかったのが残念」

「姫さま、なりませんぞ。たとえ人気があっても、あやつは盗人ですからな」

「でもでも、評判の良くない家からしか盗まないんでしょう?」

「それでも盗人は盗人です。人の物を盗んでいい訳などありません」

ギロリと睨まれて、花菜は肩をすくめた。

「失礼よ、助けてくださった人なのに。それに人鬼丸じゃないかもしれないんだから」

口ではそう言いながら、彼こそが人鬼丸だと花菜は確信をしていた。

――彼は普通の人間だった。しかも涼やかな目をした、とても素敵な人……。

おにぎり、ちゃんと食べてくれるかしら。

うっとりとそんなことを思っていると、嗣爺がさあさあと急かし始めた。