次の日、碧月は弘徽殿を訪れた。

「あら、久しぶりね」
「そんなことはないだろう」

女御は首を傾げたて考えると、「そういえば、つい最近も来たわね」と納得した。
なにしろほんのちょっとしか腰を下さずすぐに行ってしまったのだから、来ていないのと同じであるが。

「ねえ、李悠さまのご結婚の話、あなたは何か聞いていたの?」
「いや」

「そうなの。やはり急なお話なのね。慌ただしいお正月の騒ぎもようやく落ち着いたのに、花菜がいなくなってしまって寂しいわ。ねぇ碧月、花菜はやっぱり結婚してしまうのかしら。残念で仕方がないわ、よりによって李悠さまだなんて。他の方なら時々でもいいから女房勤めをお願いできたのに、でもおめでたいことだから、そんなことを言ってはいけないわね」

言うだけ言って、女御は溜息をつく。

「せめて、お祝いの品選びを楽しむことにするわ……。それにしても、李悠さまがあの子に想いを寄せているなんて、噂にも聞いたことがなかったわ。あなたは? なにか気づかなかったの?」

碧月は、左右に首を振る。