***
その日、花菜は藤原家の竹林の別荘に泊まることになった。
そうなることを見越していたかのようにトキからの伝言があり、明日あらためて迎えに来るという。
何しろ積もる話がある。
「緑子、お休みをもらったの?」
「そうなの。でも家には帰りたくないし」
緑子は実家にいる継母と折り合いが悪い。それを理由に女官になったくらいだ。
「それで、花菜の家に行こうと思ったんだけれどね、なにしろこの騒ぎでしょう? それで朱鳥のところに来たってわけ」
短期間ではあったが朱鳥が宮中に通っていた頃、休憩時間になると時々朱鳥のもとへ花菜が遊びに行っていた。
そのうち緑子も付いて行くようになり、三人は親友になったのである。
「そんなに有名なの?」
噂になっているらしいということは、ここへ来る道中、トキから聞いて初めて知ったくらいである。
今更のように花菜は不安になった。
「そりゃもう大事件だもの。何しろ李悠さまよ? 碧の月君もそりゃあ人気だけれども、李悠さまは別格だし」
「どんな方なの? 私そういうことに疎くて。教えて緑子」
朱鳥が身を乗り出してせがんだ。
その日、花菜は藤原家の竹林の別荘に泊まることになった。
そうなることを見越していたかのようにトキからの伝言があり、明日あらためて迎えに来るという。
何しろ積もる話がある。
「緑子、お休みをもらったの?」
「そうなの。でも家には帰りたくないし」
緑子は実家にいる継母と折り合いが悪い。それを理由に女官になったくらいだ。
「それで、花菜の家に行こうと思ったんだけれどね、なにしろこの騒ぎでしょう? それで朱鳥のところに来たってわけ」
短期間ではあったが朱鳥が宮中に通っていた頃、休憩時間になると時々朱鳥のもとへ花菜が遊びに行っていた。
そのうち緑子も付いて行くようになり、三人は親友になったのである。
「そんなに有名なの?」
噂になっているらしいということは、ここへ来る道中、トキから聞いて初めて知ったくらいである。
今更のように花菜は不安になった。
「そりゃもう大事件だもの。何しろ李悠さまよ? 碧の月君もそりゃあ人気だけれども、李悠さまは別格だし」
「どんな方なの? 私そういうことに疎くて。教えて緑子」
朱鳥が身を乗り出してせがんだ。



