事の本質はどうあれ、起きた事実だけで言えば合っている。

碧の月君が助けてくれたことも、李悠さまが求婚したということも嘘ではない。
更に言えば、小屋に迎えに来てくれた時、ひしと感じた月君からの愛情……。

市女笠の垂れ布が隠してくれているから良かったものの、恐らく顔は真っ赤になっているだろう。

「もし、李悠さまから逃げて月君の元に行きたいのであれば、方法はないわけではありませんよ」

「え? そうなの?」

「その前に、お気持ちをお聞かせいただけませんか? どうしたいと思っていらっしゃるのですか?」

そこまで色々とわかっているトキに、隠す必要はないのではないか?
そう思って花菜は正直に告白した。

「わからないわ。月君の気持ちを知ったのはつい最近のことだし、いままで女御さまの弟君という目でしかみたことがなかったの」

「李悠さまのことは? 李悠さまの本心はいずれにしろ、どう思っていらっしゃるのですか?」

「それは、それこそ寝耳に水だったので実感がなくて……。身に余るというか、身に余りすぎるお話なのは重々承知なのよ」

言いながら、どうしても心に引っかかるなにかを自分でも見つけられない。その不安な思いが声色に滲み出る。

「でも、気が重いの……」

「もしかして、好みではないとか?」

――え?