「ええ? そんなに?」

「はい。みんなご丁寧に、盗んだ後に傀という書置きを残しているらしいです。但し、偽者は盗むだけで、配ることはないでしょうけど」

「それはそうよね。でも、人鬼丸が贈り物を置いていく姿を見たという人はいるんじゃないの?」

「いますよ。でも本物の傀を見たことがあるという人の話も色々で、黒装束というところは一致しているのですが、鬼のように大きな男だったとか、髪に白いものが混じっていた老人だったとか、若い女だったとか、若い男だったとか、色々あるので、結局一味の者たちなのだろうという噂で落ち着いています」

「なるほどねぇ……」

市で商人から聞いた話も同じような話だった。

果たして自分が知るカイは、本当に、本物の人鬼丸なのだろうか?
トキの話を聞くうちに、またわからなくなってきた。

字が書ける盗賊……。

たとえば傀のすることに共感して、貴族が協力をしているとか?
そんなことをつらつらと思っていると、ふいにトキが聞いてきた。

「ところで、ハナさんは結婚が嫌でスミレさんのところに来たんですか?」

「えっ?」

「狐憑きの花菜姫が、その神憑りな魅力によって李悠さまに見初められた」
そう言ってトキがクスッと笑う。