「でも、あなたはとっても美人だわ」
トキは、ありがとうございますと肩をすくめた。
「トキさん、もしかしたら貴族なんじゃないの?」
今度は、意外そうに花菜を振り返りジッと見つめトキは、
「実は……」と、ゆっくりと話し始めた。
「没落貴族の成れの果てですよ。父が亡くなってからの生活は酷いものでした。兄が元服してからはなんとか生活できる状態にはなりましたが、数年前、流行り病で母が亡くなってからは、兄と相談して自由に生きていこうということになり、私はスミレさんのところに来たんです」
「そうだったのね。スミレさんのところにはどうやって? 私のように東市でスミレさんと知り合ったとか?」
「人鬼丸が米と一緒に文を残してくれたんです。東市にいるスミレという女商人を頼るといいってね」
――え? 人鬼丸が手紙を?
花菜は人鬼丸から手紙をもらったことはない。
見たことがあるのは、傀という文字だけだ。
「文も書けるのね、人鬼丸って」
そう言いながら、盗む理由を書いた手紙を検非違使に送っていると言っていたことを思い出す。
それでも自分は手紙をもらったことがない。
そう思うと、なぜかとても胸が沈んだ。
トキは、ありがとうございますと肩をすくめた。
「トキさん、もしかしたら貴族なんじゃないの?」
今度は、意外そうに花菜を振り返りジッと見つめトキは、
「実は……」と、ゆっくりと話し始めた。
「没落貴族の成れの果てですよ。父が亡くなってからの生活は酷いものでした。兄が元服してからはなんとか生活できる状態にはなりましたが、数年前、流行り病で母が亡くなってからは、兄と相談して自由に生きていこうということになり、私はスミレさんのところに来たんです」
「そうだったのね。スミレさんのところにはどうやって? 私のように東市でスミレさんと知り合ったとか?」
「人鬼丸が米と一緒に文を残してくれたんです。東市にいるスミレという女商人を頼るといいってね」
――え? 人鬼丸が手紙を?
花菜は人鬼丸から手紙をもらったことはない。
見たことがあるのは、傀という文字だけだ。
「文も書けるのね、人鬼丸って」
そう言いながら、盗む理由を書いた手紙を検非違使に送っていると言っていたことを思い出す。
それでも自分は手紙をもらったことがない。
そう思うと、なぜかとても胸が沈んだ。



