貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

前回行方知らずになった時、カイが暖かい衣に包むようにして寝ている花菜を家まで送り届けた。
そのことも狐の仕業ということになっている。

――狐も随分と信用されたわね。
全く疑わないところがいかにも父らしく、花菜はクスッと笑った。

『姫さまがまたいなくなってしまった事をご報告すると、殿さまはすぐに蒼絃さまを訪ねられました。ご相談の結果、物忌などを理由にご結婚の儀を延期せざるを得ないという形を取る事になったようでございます』

物忌になると、人の行動は制限される。

犬が庭先で出産をしたということを物忌の理由にするらしい。
出産はめでたい事であるのに、血で穢れるという理由から凶とされる。物忌とは縁起が悪いとかそういった感じのものだが、こんな時には非常に便利なジンクツだった。

物忌なら仕方がないと、誰もが疑問に思わず納得してくれる完璧な理由になる。

――良かった。
これで、花菜の父が流罪など罰を受ける心配はなくなった。

まずはそのことに、ホッと胸を撫で下ろした。

ついでに、このまま李悠さまの興が削がれて縁談はなかったことに、ということになれば一番いいのだけれど……。
そんなことを思ってため息をついた。

それにしてもと不思議なのは、なぜ? どうして李悠さまは結婚などと言い出したのか、ということである。

もしかして、身分の低い妻と結婚することで、二度と親王には戻らないという意思表示がしたいとか?