弓の先が、花菜の帽子のつばをツンと弾く。
「あっ」
不意の事で押さえる間もなく、帽子はハラリと落ちた。
花菜の長い髪が、スルスルと落ちて広がってゆく。
あやうく姫さまと口に出しそうになり「ひ」と言った嗣爺が、慌てて口を押えながら男と花菜の間に立つ。
「なにをする?!」
男はまたフッと笑い、無言のまま馬の手綱を引いた。
そしてそのままヒヒーンという馬の嘶きを残し、男は走り去った。
「なんなんだ、あの男は。奇妙な成りをして」
口元を隠していただけではない。
男が変わっていたところは、その全身だ。
まずは頭。
庶民ですら男なら誰しも被っている烏帽子。
なのに男はそれを被らず、髪を後ろで一つに結わえただけの総髪だった。
そして、着ている物も奇妙だった。
直垂を着ていたが袖も袴の裾も紐で結び、全身が黒という出で立ちだったのである。
「あっ」
不意の事で押さえる間もなく、帽子はハラリと落ちた。
花菜の長い髪が、スルスルと落ちて広がってゆく。
あやうく姫さまと口に出しそうになり「ひ」と言った嗣爺が、慌てて口を押えながら男と花菜の間に立つ。
「なにをする?!」
男はまたフッと笑い、無言のまま馬の手綱を引いた。
そしてそのままヒヒーンという馬の嘶きを残し、男は走り去った。
「なんなんだ、あの男は。奇妙な成りをして」
口元を隠していただけではない。
男が変わっていたところは、その全身だ。
まずは頭。
庶民ですら男なら誰しも被っている烏帽子。
なのに男はそれを被らず、髪を後ろで一つに結わえただけの総髪だった。
そして、着ている物も奇妙だった。
直垂を着ていたが袖も袴の裾も紐で結び、全身が黒という出で立ちだったのである。



