「鬼じゃなくて、仏なんだけどね」
スミレが笑う。
「あはは、ほんとですね」
一緒に笑いながら、人鬼丸がどれほど人々に愛されているかをしみじみと実感しながら思った。
カイは、皆に平等に優しくて、皆に愛されている……。
――とても素晴らしい人だということを再認識できたのに、
このモヤモヤとした気持ちは一体なんだろう?
掴んでいたはずのものが、手から離れていってしまうこの感覚。
切なさにも似たこの気持ち。
もしかしたら私、自分だけ特別だと思っていた?
「ああそうだ、これ」
スミレがスッと胸元から結んである紙を取り出した。
紙の端には『こ』と小さく書いてある。
小鞠からだという印だ。
「東市でね、預かったよ」
「ありがとうございます」
スミレが行ってひとりになると、花菜は文の結びを解いた。
手紙には、そちらはどうですか、お辛くありませんかと、花菜を気遣う文字が並ぶ。
優しい小鞠の声が聞こえるようだった。
どうやら今のところ、大事にはならずに済んでいるらしい。
『殿さまは、狐なら無事返してくれるだろうとおっしゃっています』
スミレが笑う。
「あはは、ほんとですね」
一緒に笑いながら、人鬼丸がどれほど人々に愛されているかをしみじみと実感しながら思った。
カイは、皆に平等に優しくて、皆に愛されている……。
――とても素晴らしい人だということを再認識できたのに、
このモヤモヤとした気持ちは一体なんだろう?
掴んでいたはずのものが、手から離れていってしまうこの感覚。
切なさにも似たこの気持ち。
もしかしたら私、自分だけ特別だと思っていた?
「ああそうだ、これ」
スミレがスッと胸元から結んである紙を取り出した。
紙の端には『こ』と小さく書いてある。
小鞠からだという印だ。
「東市でね、預かったよ」
「ありがとうございます」
スミレが行ってひとりになると、花菜は文の結びを解いた。
手紙には、そちらはどうですか、お辛くありませんかと、花菜を気遣う文字が並ぶ。
優しい小鞠の声が聞こえるようだった。
どうやら今のところ、大事にはならずに済んでいるらしい。
『殿さまは、狐なら無事返してくれるだろうとおっしゃっています』



