貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

次の日。
下屋の調理場で朝食の片付けをしている花菜のところに、スミレが来た。

「ハナ、ちょっといいかい?」
「はい」

「あんた裁縫以外にも料理が上手なんだってね。あの小鞠って子がそんなことを言ってたけど」
「あ、はい。お料理好きです」

「市で売ってる味噌がついた屯食は、あんたが考え出したそうじゃないか」
「ええ」

当然のことだが、花菜が宮仕えに出てから東市では味噌おにぎりが消えた。
聞けば女商人は味噌おにぎりが大好物だったという。

「屯食以外にも色々作ってみておくれよ。市で売ってみるからさ」
「はい。わかりました!」

花菜は早速食材を眺めて、何が出来るかを考えた。

宮中のように乳製品や蜂蜜のような高級品や、諸国から届く旬の食材はない。野菜に干物に雑穀と、ある物は限られている。

――となるとやはり雑穀米の混ぜご飯かしらね。焼いた魚を崩して、胡麻と漬物の青菜のみじん切り混ぜよう。
などと思いながら干し魚に手を伸ばした。

「ん?」

ふと目に留まったのは、魚の下に敷いてある葉に書かれた文字。

「あっ」

「なんだい?」

「これは……」

そこに書かれた文字は紛れもなく『傀』の印。