貧乏姫でもいいですか？（+おまけ）

「……あ」

そう言われてふと老婆の手を見れば、浅黒く陽に焼けて沁みも多い。
労働に荒れた手だ。

急に自分の白い手が恥ずかしくなって、花菜は衣で手を隠した。

そっと部屋の中の女性たちに目をやった。
皆、邪魔にならないように髪を束ねている。もくもくと俯いて仕事に励む女たちは男の肌ほどは黒くないが、それでもどこか浅黒い。手は花菜の手のように白くもなく指も細くはない。

ここにいる女性たちがどんな悩みを抱えているのかはわからないが、少なくとも自分よりも何倍も何十倍も辛い環境で生きている。

――私には立派な家も何不自由ない暮らしもあるというのに。
そう思うと肩身が狭かった……。

ふとスミレの声が響いた。

「トキ、ひと段落したら下屋で手伝っておくれ」
トキと呼ばれた女が返事をする。
「はーい」

見れば、スミレは外から顔を出している。
そして今度は部屋の隅の方にいた若い女の子を見て叱った。

「こらっ、サツキ！　隠れてないであんたも来て手伝いな」
サツキと呼ばれた女の子はペロッと舌を出して、笑いながらスミレに付いていった。

それを見て老婆がクックと笑う。
「あの子は母親と行き倒れていたところをスミレに助けられたんだよ。あの人はね、口は悪いけど本当に優しい人なのさ」