貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

どれくらい時間が経っただろうか。
区切りのいいところで、フゥっとひと息ついた。

外に目をやると陽が傾いている。

――藤盛の家ではもうそろそろ夕食の準備が始まる頃ね。

深く考えずにこうして逃げてきたけれども、今頃どうなっているだろう。
小鞠は責められていないだろうか?

李悠さまはこれを知ったらどうお思いになるだろう? まさか、お怒りになってお父さまが島流しになんてことにはならないわよね?

ゾッとしたところで、ふと思い出した。
大丈夫、そんな心配はない。
万が一にもそんな様子があれば、小鞠から連絡が入ることになっている。

とにかく仕事に集中しよう。

今はとにかく何も考えないほうがいい。
そう思いながら針を手に取ったところで、「見せてごらん」と老婆が覗き込んだ。

花菜が衣を渡すと、老婆は見たり触ったりひっくり返したりしながら仕上がりを確認しはじめた。

「どうでしょう?」

「うんうん。よくできてるよ」

「ありがとうございます」

衣を戻しながら、老婆はしみじみと花菜の手を見た。

「きれいな手だねぇ」