貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

女達に混じって花菜も背中に風呂敷を背負って歩いた。

「しかし、よく化けたねぇ。髪が長いことを覗けばあたしらと変わんないじゃないか」
スミレが笑う。

笠もそうだが、スミレが渡してくれて上から着た着物は、何の染めも飾りもない麻で出来た庶民の着物である。
もともと細見の花菜が厚着をしたところで不自然に着ぶくれすることもなく、妙に馴染んでいる。

「アハハ。自分でもそう思います」

「なに言ってんだい、冗談だよ。あんたみたいな別嬪が庶民だったら、東国の受領あたりに目を付けられて、連れ去られちまうさ」


そんな話をするうち、スミレの家に着いたらしい。

「さあ、ここだよ」

門を潜ると、庭は畑になっていた。

だが、もしかすると元は遣り水の流れる庭園だったのかもしれない。
古びてはいるが、元はそれなりの風格を思わせる邸だった。

「どうだい?それなりに立派だろう。商人だったあたしの亭主が残してくれたのさ」

「はい。とても立派だと思います」

母屋といくつかの小屋があるのみだが、引っ越す前の藤盛家のように朽ちたところはない。充分感心できる建物だった。
外には老人の男がふたり、力仕事をしている。

邸の中にはいると、大勢の女たちがいた。