次の日の午後。
小鞠はまず邸の人々に言って回った。
「花菜姫さまはゆっくりお昼寝をなさりたいそうなので、自分から起きてくるまで起こしたりしないようにとのことです」
その間に花菜は使用人の服装に着替え、今となっては懐かしい麦藁帽子を被って待機する。
「東市の店を閉めたあと、スミレさんたちがここを通ります。その時に、カンカンカンと三回木を打ち鳴らす音が聞こえます。そうしたら裏門から出て合流してください」
「わかったわ」
約束の時間が来ると裏門に近い小屋に移動して耳を澄まし、その時を待った。
ほどなくして打ち合わせ通り木を叩く音が響く。
カンカンカン。
「さあ、姫さま」
小鞠に見送られて、無事花菜は通りへ出た。
スミレは荷物を積んだ馬を連れて、五人の女性達と共に歩いてくる。
花菜を見つけると軽く頷き、その輪の中に花菜を入れた。
「その上からこの笠を被りな。それからこの衣を上に着るんだ」
スミレはちょっとくたびれた市女笠を花菜に渡した。
「ありがとうございます」
花菜は早速、陰に隠れて笠を被った。
その笠は、つばが深く下に下がる形をしている。
垂れ布はついていないがその代わり、一部は緩めに編んであるので先は見通せるのに顔が見えにくい。
なるほど、隠れるためには願ったり叶ったりの笠だった。
小鞠はまず邸の人々に言って回った。
「花菜姫さまはゆっくりお昼寝をなさりたいそうなので、自分から起きてくるまで起こしたりしないようにとのことです」
その間に花菜は使用人の服装に着替え、今となっては懐かしい麦藁帽子を被って待機する。
「東市の店を閉めたあと、スミレさんたちがここを通ります。その時に、カンカンカンと三回木を打ち鳴らす音が聞こえます。そうしたら裏門から出て合流してください」
「わかったわ」
約束の時間が来ると裏門に近い小屋に移動して耳を澄まし、その時を待った。
ほどなくして打ち合わせ通り木を叩く音が響く。
カンカンカン。
「さあ、姫さま」
小鞠に見送られて、無事花菜は通りへ出た。
スミレは荷物を積んだ馬を連れて、五人の女性達と共に歩いてくる。
花菜を見つけると軽く頷き、その輪の中に花菜を入れた。
「その上からこの笠を被りな。それからこの衣を上に着るんだ」
スミレはちょっとくたびれた市女笠を花菜に渡した。
「ありがとうございます」
花菜は早速、陰に隠れて笠を被った。
その笠は、つばが深く下に下がる形をしている。
垂れ布はついていないがその代わり、一部は緩めに編んであるので先は見通せるのに顔が見えにくい。
なるほど、隠れるためには願ったり叶ったりの笠だった。



