貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

――カイ。

「でも小鞠、逃げるなんて、そんなことできるの?」

「できます」

「でも、そんなことをしたらこの家がどうなるか」
「大丈夫でございますよ。答えが出るまでの間だけ、狐に攫われたことにすればいいじゃないですか。私にいい考えがあるんです」

小鞠の作戦とはこうだ。
「東市に衣を売っている女商人がいますよね? 姫さまと仲良しの」

「うんうん」

「あの人に助けてもらいましょう。私もあれから何度も東市に行って、いまではすっかり仲良しなんですよ。スミレさんって言うんですけどね。スミレさんの家まで遊びに行ったことがあるんです」

「そうなの?」

小鞠の話では、スミレの家は京の西の外れにある大きな邸で、女たちが機織りなどの仕事をしているという。

「身寄りのない女性たちが、肩を寄せ合って暮らしているのだそうです。このまま、お邸にいて鬱々と過ごされるよりは、気晴らしになりますよ?」

「なる! 絶対に気晴らしになるわ! 行く、私スミレさんのところに行きたい」