貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「小鞠は誰かを好きになったことある?」

うーんと首を傾げた小鞠は左右に首を振った。
「ありません」

「私はね、小鞠。宮中に行ってすぐ頭中将に恋をしたの」

「ええ!? 姫さまったら」

「でもね、すぐに失恋したのよ。頭中将は他の姫がお好きだから」

「あらら」
小鞠は肩を落とした。

「上手くいかないものですね」

「なんだかそんなことが遠く感じるわ。ほんのひと月前の話なのに」

今では、頭中将に抱いた恋心がどんなものだったかも、よく思い出せなかった。

あまりにも色々なことがあったこのひと月。

女官になり様々な出会いがあり、父が出世して家が引っ越しして。
女御さまのもとで女房としてお仕えすることになった矢先の結婚の話。

変化が大きすぎて実感がない。
今ここに居る邸も自分の家にいるという感じすらなかった。