「そうだ。その時揉めた相手の女は、花菜姫だ。あの子は家計を助けるために使用人並に働いていた。本当にいい子だよ」
碧月は絶句した。
「そんなに前から、彼女を知っていたのか」
李悠は薄っすらと口元に笑みを浮かべて頷き、ジッと碧月を見つめ返した。
「このへんでしっかり捕まえておかないと、誰かに攫われるかもしれぬからな」
――それはどういう意味だ?
考えるまでもなく、自分を牽制しているのだと碧月にもわかる。
唇を噛み、膝の上の拳を震えるほど強く握りしめた時、カサリと音を立てて御簾をくぐって来る人の気配がした。
「あぁ、碧月もいたのか」
顔を見せたのは、頭中将だった。
「花菜姫のこと聞いたよ。本当なのか?」
碧月はスッと立ち上がり、入れ替わるように無言のまま背中を向けて、御簾をくぐった。
碧月は絶句した。
「そんなに前から、彼女を知っていたのか」
李悠は薄っすらと口元に笑みを浮かべて頷き、ジッと碧月を見つめ返した。
「このへんでしっかり捕まえておかないと、誰かに攫われるかもしれぬからな」
――それはどういう意味だ?
考えるまでもなく、自分を牽制しているのだと碧月にもわかる。
唇を噛み、膝の上の拳を震えるほど強く握りしめた時、カサリと音を立てて御簾をくぐって来る人の気配がした。
「あぁ、碧月もいたのか」
顔を見せたのは、頭中将だった。
「花菜姫のこと聞いたよ。本当なのか?」
碧月はスッと立ち上がり、入れ替わるように無言のまま背中を向けて、御簾をくぐった。



