幸か不幸か李悠はいた。
彼はいつものように文机に向かっている。
「聞いたぞ、婚儀のこと。何故急にそんなことを?」
「いきなりだな」
チラリと碧月を見た彼は、フッと口角を上げた。
「急ではない。もうずっと、彼女を見てきた。ようやくこの想いが恋だと気づいた」
手にした筆をすすめながら淡々と彼はそう答える。
碧月は、ふと思いついた。
「もしかして、あの白銀の表着は李悠が贈ったものなのか?」
白銀の表着とは、花菜が男に襲われた宴の日に着ていた美しい表着のことである。
よく似合ってはいたがなんとなく、気になっていた。
彼女が手に入れるにしては、あまりに上質な物であったからだ。
「ああ、実はそうなんだ。匿名で姫に贈った物だ。そう言えばもう忘れているかもしれないが、去年の年末、東市のあたりで女が酔った男らと揉めたことがあった。その男ふたりがお前のところの者だったが」
「そのことなら覚えている。蒼絃から聞いて、ふたりを処分した。もともと素行に問題があるふたりだったが。え? まさかその時の」
彼はいつものように文机に向かっている。
「聞いたぞ、婚儀のこと。何故急にそんなことを?」
「いきなりだな」
チラリと碧月を見た彼は、フッと口角を上げた。
「急ではない。もうずっと、彼女を見てきた。ようやくこの想いが恋だと気づいた」
手にした筆をすすめながら淡々と彼はそう答える。
碧月は、ふと思いついた。
「もしかして、あの白銀の表着は李悠が贈ったものなのか?」
白銀の表着とは、花菜が男に襲われた宴の日に着ていた美しい表着のことである。
よく似合ってはいたがなんとなく、気になっていた。
彼女が手に入れるにしては、あまりに上質な物であったからだ。
「ああ、実はそうなんだ。匿名で姫に贈った物だ。そう言えばもう忘れているかもしれないが、去年の年末、東市のあたりで女が酔った男らと揉めたことがあった。その男ふたりがお前のところの者だったが」
「そのことなら覚えている。蒼絃から聞いて、ふたりを処分した。もともと素行に問題があるふたりだったが。え? まさかその時の」



