貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

その頃――。
花菜は、山里の小さな小屋の中にいた。

小屋には囲炉裏(いろり)があり、そこには鍋が湯気を立てている。

味見をして、ふんふんと満足すると、花菜はあらためてハァっと溜め息をついた。

――心配しているだろうなぁ。

それでも、手紙を読めば安心するはず、そう自分に言い聞かせる。

実際何もないのだし、明日には無事帰るのだから許してくれるだろう。
そんなことを思ううち、外で音がした。

ガタガタと音を立てて扉が開く。

「美味そうだな」

「どうでした? 嗣爺に手紙渡せました?」

「ああ。読んだ爺がお前の邸の方に走って行くのを確認した」

どんな風に渡したかまでは男は言わないが、それでも花菜は安心してホッと胸を撫でおろした。
それ以上気に病んでも仕方がないとわかっている。
自分の意志でこの場にいるのだから。

「それなら良かった。さあ食べましょう、ご飯ができたわ」

キノコと鶏肉が入った鍋に、串に刺して焼いた“きりたんぽ”をほぐしながら入れる。
比内地鶏ではないが、きりたんぽ鍋の出来上がりだ。

お椀にすくって男にどうぞと渡す。

「うまいもんだな。貴族の姫にしておくには惜しい」

「あはは。じゃあ私には何が向いているっていうの?」

「俺みたいな盗賊とか?」
男はそう言って笑う。

と言っても、彼は竹で出来た笠を目深に被っているので、花菜からはほんの少し顎が見えるだけだ。
だから、彼がどんな顔をして笑っているのかはわからない。
それでも花菜はうれしかった。