貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

ついさっき来たばかりだし、ろくに話をしていないというのに、彼はそのことに気づいていないのか。
挨拶すらもそこそこに背中を向けて部屋を出ていく。

お茶を運んできた女房が、その背中を振り返りながら「月君は……もうお帰りですか?」と戸惑いながら入ってきた。

「ええ、まったく何をしに来たのやら」
そのことに本人は気づいているかしら、と女御はため息をついた。



「馬で行かれるのですか?」

「ああ。荷物があるわけじゃないし、牛車では時間もかかる。この時間ならまだ失礼にならないだろう。すぐに帰るから供は必要ないよ」

「ですが」と、家司が声をかける間もなく月君は馬に跨って手綱を引いた。

「お待ちください」
慌てて家司も後を追って走ったが、ようやく月君に追いついたのは既に中納言邸の門の前。

「なんだ、来たのか。ひとりでいいって言ったのに」
「まぁ、そうですが」