「姫さま、気をつけて。獣が出たら危険ですから音を立てて歩くのですよ」
「はーい」
一心不乱にキノコと木の実を採って歩き、里山に到着して一時もした頃には籠はいっぱいになった。
「もう充分でございましょう」
「そうね、腹ごしらえして帰りましょうか」
ここから邸まで、また歩かなければならない。
見晴らしのいい開けた場所に腰をおろし、景色を見下ろしながら竹筒を手にした。
竹を切って栓をしてある竹の水筒だ。
中には麦茶が入っている。
「あー、美味しい。いい景色ね」
赤や黄色。様々に色づいた木々が山や里を染めている。
キノコ狩りの楽しみは、こんな景色を見渡せることにもある。
コンクリートの建物はない。
自分のいる世界は、これほどまでに美しかったのか。
喉を潤してホッとしながら、そんなことを思いつつ、しばしの間その景色を味わった。
「ほんとうに。みごとな紅葉ですな」
そう言いながらも嗣爺は、色気より食い気らしい。
首に巻いて背負っていた包みを解いた。
「では頂きますか」
竹の皮を解いて出てきたのは、花菜が作った、おにぎり二つ。
同じ包みが五つある。
ふたりにしては多いかもしれないが、腹が減っては戦は出来ぬ、少ないよりはいいと沢山持ってきた。
「はーい」
一心不乱にキノコと木の実を採って歩き、里山に到着して一時もした頃には籠はいっぱいになった。
「もう充分でございましょう」
「そうね、腹ごしらえして帰りましょうか」
ここから邸まで、また歩かなければならない。
見晴らしのいい開けた場所に腰をおろし、景色を見下ろしながら竹筒を手にした。
竹を切って栓をしてある竹の水筒だ。
中には麦茶が入っている。
「あー、美味しい。いい景色ね」
赤や黄色。様々に色づいた木々が山や里を染めている。
キノコ狩りの楽しみは、こんな景色を見渡せることにもある。
コンクリートの建物はない。
自分のいる世界は、これほどまでに美しかったのか。
喉を潤してホッとしながら、そんなことを思いつつ、しばしの間その景色を味わった。
「ほんとうに。みごとな紅葉ですな」
そう言いながらも嗣爺は、色気より食い気らしい。
首に巻いて背負っていた包みを解いた。
「では頂きますか」
竹の皮を解いて出てきたのは、花菜が作った、おにぎり二つ。
同じ包みが五つある。
ふたりにしては多いかもしれないが、腹が減っては戦は出来ぬ、少ないよりはいいと沢山持ってきた。



