貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「やあ花菜、元気かい?」

「お父さまは、今日の人事で中納言さまに抜擢されたそうよ」と女御が言う。

「ち、ちゅうなごん?」

父は少し恥ずかしそうに頷いた。
「先の中納言さまが引退して出家なさったそうでな。それで私に、ということになったらしい」

みるみる花菜の目に涙が溢れる。
「良かった。お父さま、本当に……」


二か月ぶりだろうか。
久しぶりに会った父は顔色も良くて、とても元気だった。

女御の好意に感謝して、花菜はそのまま父と共に弘徽殿を出た。

ようやく邸に帰ることができる。

「花菜、よくがんばったね」

「うふふ、お友達もできたし毎日が楽しいわ」

久しぶりとはいえ、父は花菜よりも宮中に慣れている。
母や小鞠、嗣爺の様子を聞いたりしながら、こっちだよあっちだよという父に付いて行くと、そこには一台の牛車があった。

「さあ、これで帰ろう」

「この牛車は? どなたかにお借りしたの?」

「違うよ。我が家の車だ。これから必要になるからね。支度金も頂いたんだよ」

「そうなの? そういえはお父さま、とても立派なお召し物だわ」

「任命に先立って贈られてきたんだよ。あ、そうそう、屋敷もね、引っ越したんだよ。今までよりも宮中に近いし、広い屋敷だ」