濡れ縁を歩いていると、後ろから足早な足音が聞こえてきた。
二人は俯いて端に寄り先を譲ったが、足音の主は立ち止まって声を掛けてくる。
「これから弘徽殿に行くのか?」
足音の主は、碧の月君だったのである。
「あ……。はい、今から弘徽殿へ向かうところです」
「それならその荷物を持ってあげよう」
そう言って月君は、返事を待つことなく花菜の手から細々とした道具が入った箱を取り上げた。
花菜が「え?」と声を上げたときには、月君は既に背中を向けいて、あっという間に先に行ってしまった。
唖然と見送る花菜を、緑子がクスクスと笑いながら突いてくる。
「ふふ、月君って、花菜のことを本当に好きなのね」
「まさか、もう、やめて、そんなことないってば」
緑子が抱えている着物を半分取って、花菜は呆れたようにため息をつく。
「でも、同情してくれているのね、あんなことがあったから。
実は姉思いの優しい方なのよね。最初の印象とは随分変わったわ」
二人は俯いて端に寄り先を譲ったが、足音の主は立ち止まって声を掛けてくる。
「これから弘徽殿に行くのか?」
足音の主は、碧の月君だったのである。
「あ……。はい、今から弘徽殿へ向かうところです」
「それならその荷物を持ってあげよう」
そう言って月君は、返事を待つことなく花菜の手から細々とした道具が入った箱を取り上げた。
花菜が「え?」と声を上げたときには、月君は既に背中を向けいて、あっという間に先に行ってしまった。
唖然と見送る花菜を、緑子がクスクスと笑いながら突いてくる。
「ふふ、月君って、花菜のことを本当に好きなのね」
「まさか、もう、やめて、そんなことないってば」
緑子が抱えている着物を半分取って、花菜は呆れたようにため息をつく。
「でも、同情してくれているのね、あんなことがあったから。
実は姉思いの優しい方なのよね。最初の印象とは随分変わったわ」



