貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「そうですな。ですが姫さまが着飾れば、そこらのどんな姫よりも美しくなりますわ」

嗣爺はフンと鼻を鳴らす。

「それはどうもありがと」

――着飾ればねぇ。

果たしてそんな日が来るのだろうか?

そんなことを思いながら、花菜はチラリと自分の姿を顧みる。

市女笠どころか被っているのは藁の帽子。背負っているのは背中が隠れるほどの大きな竹の籠。衣はどうかといえば色もない庶民のそれで、風流どころか本気モードの出で立ちだ。

優雅に着飾って出かける日が来るとは、到底想像できない。

――まあいいわ。それでも毎日が楽しいもの。
そう思いながら、花菜はクスっと笑った。

「さあ、そんな日のためにも、木の実とキノコを籠に山盛りが目標よ! 松茸がとれたら市で売って、残りはお父さまとお母さまの食卓に出してあげなくちゃ」

「残り物って、姫さま、殿さまに失礼でございましょう」

アハハと笑いながら、花菜と嗣爺は意気揚々と山に入って行った。