貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

「ん?」

「不思議なほど香りがしなかったわ?」

「香り?」

「ほら、たとえば碧の月君は麝香の甘い香りが特徴的でしょ? 頭中将は、もっと丁子が効いている爽やかな香り」

「うん」

「皆なにかしらの個性のある香りがするものなのに、夕べの人は、なんの香りもしなかった」
緑子が不思議そうに首を傾げる。

香りがしない人……。

香りがしてはいけない人?

花菜はふと思った。

――カイ、あなたなの?