「月君は、意外とお強いんですね」
「意外は余計だ」
「フフッ。だって、あんなに大きな男の人を投げ飛ばすなんて、ちょっとビックリです」
「どうせ蹴鞠くらいしかしてないと思っているだろうが、鷹狩にも行くし、馬も走らせる。戦だって他人事じゃない」
「えっ? 戦?」
「ものの例えだよ」
クスッと笑った月君は、視線を花菜の唐衣に移した。
「いい着物だな」
唐衣は『傀』に貰ったものである。
もしどうした?と聞かれても、正直には答えらない。
「あ、えぇ……」
花菜は少し戸惑うように言葉を濁した。
「宮中にいると、何かと必要だろう?」
「えぇ、わかっていたつもりなのですが――。でも、きりがないですから、気にしないことにしています」
そんなことを話し、邸に帰るという月君にあらためて礼を言って見送った。
渡廊を進む後ろ姿はいつものように優雅だ。
こんなとこで寝たのだから疲れは取れていないだろうに、彼の様子は変わらない。
ふと振り返った月君が、軽く手を振る。
クスっと笑いながら花菜も手を振り返した。
――いい人なのね、実は。
渡廊を進む月君を見送ると、「わかりにくいんだから」と笑いながら、花菜は緑子の待つ塗籠に戻った。
「意外は余計だ」
「フフッ。だって、あんなに大きな男の人を投げ飛ばすなんて、ちょっとビックリです」
「どうせ蹴鞠くらいしかしてないと思っているだろうが、鷹狩にも行くし、馬も走らせる。戦だって他人事じゃない」
「えっ? 戦?」
「ものの例えだよ」
クスッと笑った月君は、視線を花菜の唐衣に移した。
「いい着物だな」
唐衣は『傀』に貰ったものである。
もしどうした?と聞かれても、正直には答えらない。
「あ、えぇ……」
花菜は少し戸惑うように言葉を濁した。
「宮中にいると、何かと必要だろう?」
「えぇ、わかっていたつもりなのですが――。でも、きりがないですから、気にしないことにしています」
そんなことを話し、邸に帰るという月君にあらためて礼を言って見送った。
渡廊を進む後ろ姿はいつものように優雅だ。
こんなとこで寝たのだから疲れは取れていないだろうに、彼の様子は変わらない。
ふと振り返った月君が、軽く手を振る。
クスっと笑いながら花菜も手を振り返した。
――いい人なのね、実は。
渡廊を進む月君を見送ると、「わかりにくいんだから」と笑いながら、花菜は緑子の待つ塗籠に戻った。



