貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

それから少し話をしてクスクスと笑い合い、さあ帰りましょうと、ふたりはそっと妻戸を開けて顔を出した。

「誰かいるかしら?」

誰もいませんようにとの願いむなしく、塗籠の外には火鉢があって、碧の月君がその横で寝ている。

「月君だわ。一晩中ここに?」

緑子が「挨拶していらっしゃいよ」と囁く。
「あのままにしておいては失礼よ」

お世話になったというのに、知らぬ顔で放っては置けない。
「そうよね……。助けて頂いたんだもの」

緑子に促されるまま、花菜はそっと塗籠から出た。


さてどうしたものかと考えて、
とりあえず月君の枕元に座り込んだ。

誰かが用意したのだろう。
彼の体には暖かそうな毛皮がかけてある。

火鉢の炭もまだ紅く残っているし、太鼓の音で目が覚めないところを見ると、遅くまで起きていたのだろうか?