貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

それでも事態を収拾するため彼の指示通り、一番近くの塗籠を確保した。

『そこの塗籠にいた者に移動してもらいました。暖かいのでそこへ』
そう言うと彼は、苦痛に満ちた表情で頷いたのである。

まるで自身が傷を負ったようだった。

――まさか。

好きなのか?

花菜姫のことが?

彼には時折通う恋人がいないわけではないが、今のところ彼には決まった相手はいない。

でも、まさか。
もしそうだとしたら――。

「碧月さまが風邪をひいてしまいます。火鉢を持って来させますのでお待ちください」

彼自身がここで花菜姫を見守る必要はない。
冷静な彼ならば、代わりの人を呼んで来させるか、もしくは後は頼むと言うだろう。

そう思ったが、月君はただ頷いただけだった。

家司は、納得できない気持ちを抱えたまま、火鉢の用意をすべく立ち上がった。