貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

嗣爺と花菜の交通手段は、徒歩である。

目的地の里山までは一時(いっとき)、今の時間にして二時間ほどかかるだろう。

大きな籠を背負い、お弁当を持ったふたりは、早速キノコ狩りに出かけることにした。

「お気をつけて」
小鞠に見送られて、花菜と嗣爺は邸を後にした。

「いい天気」
「秋晴れですな」

空を紅く染めていた太陽は、いつの間にかすっかり顔を出している。
秋の空は青々と高く、そよぐ風は頬に気持ちいい。

「暑からず寒からず、松茸狩りにはあつらえ向きな上天気。何よりでございます」

キノコ狩りではなく松茸狩りと嗣爺が言ったことに、思わず「あはは」と花菜は笑った。

貴族はこの季節になると松茸狩りを楽しむのだ。

ちょうど今も、遠くを練り歩いているそれらしき集団が見えた。

馬に乗る公達のほか、市女笠を被った壺装束の女房達もいて、色とりどりの彼らの衣が華やかに揺らめいている。

「綺麗ねー」

花菜は眩しそうに見つめた。