貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

やがて涙も乾き始めた。

「すまなかった。大きな声を出して」

月君は、呆れたような、困り果てたような複雑な顔をして見つめている。

声をだせず、花菜は左右に首を振った。

「もっと飲むか?」

花菜はまた左右に首を振る。

「そうか……」

ジンジンする頭で、花菜はぼんやりと思った。

目が腫れぼったい。

ふと見れば袖が涙と白粉でぐしゃぐしゃになっている。
大事な着物なのに、洗わなきゃ……。
そんなことを思った。

「何かあったのか? ひとりで釣殿に行って泣くからには理由があったんだろう?」

月君が聞く。
花菜は、また左右に首を振る。

先輩女官にイジメられるのが悲しくてなんて、そんなことを言えるはずもない。

「嫉み、妬み、僻み。そんなものが渦を巻いているのが、ここ宮中だからな」

――え?